東京高等裁判所 昭和32年(う)3165号 判決
被告人 山口菊治
〔抄 録〕
論旨第二点について。
論旨は原判決は物品税課税標準額を確定せず、漫然と販売した価格に物品税法所定の税率を乗じて逋脱物品税を算定している違法があり、したがつて、原判決には審理不尽に基く理由不備若しくは法律の解釈適用を誤つた違法がある、と主張するものである。よつて按ずるに、物品税法第二条は家具類(同法第一条掲記第二種丁類物品)についての物品税算定の方法として、その税率を物品の価格の百分の二十と定め、かつ同法第三条において右の物品の価格(課税標準額という。)とは製造場より移出するときの物品の価格とする旨定めていることは所論のとおりである。しこうして、この移出価格とは物品の製造業者が当該物品を通常の卸取引数量により、かつ通常の卸取引形態によりあらゆる購入者に対し自由に売却のために提供した場合において当該物品の対価として当該物品に附すべき価格(これに容器又は包装の費用を加えたもの)をいうものであることは物品税法施行規則の定めるところにより明かなところである。
しかるに本件物品は製造業者たる山口商店から直接消費者である参議院に販売されたものであることは記録上明かなところであるから、本件各物品の税抜価格は直ちに物品税法第三条にいわゆる移出価格となすことはできないものといわなければならない。すなわち、この場合山口商店その他において同種同等の物品につき通常の卸取引形態による販売の実例があるときはその販売実例価格によるべく、若しまたその販売実例価格がないときは直接消費者に販売した場合の価格から一般小売業者に認められた小売口銭相当額を控除して製造業者としての卸売価格に引き直した金額を課税標準額と定めるべきことは理の当然であるといわなければならない。しかるに原審は何らこの点につき意を用いず、漫然製造業者たる山口商店が直接消費者たる参議院に対し本件物品を販売した価格をとつて、直ちにこれを物品税法第三条所定のいわゆる移出価格であるとして、本件逋脱税額を算定したことは、いまだ審理を尽さない違法があるものといわなければならない。したがつて、原判決には、この点において審理不尽に基く理由不備の違法があるか、或は法律の解釈適用を誤つたための事実誤認があるものというべく、この誤りが判決に影響を及ぼすことは明かであるから、原判決は爾余の論旨につき判断をなすまでもなく、この点において破棄を免れない。論旨は理由がある。
(花輪 山本 下関)